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【Pro Toolsでミキシングされた7パート】 |
前回の「『郷愁と彼方の非線形』―TR-08を使ったリズム」で書いたとおり、この曲はRoland TR-08で打ち込んだリズムにYAMAHA MOXF6シンセサイザーの音色6パートを加えた計7パートによる6分弱のインストゥルメンタルで、この曲の印象的なメロディ・ラインとなっているパート“Kemence”とそれに付加された残響によって美麗に仕上げたものです。少し東洋的な雰囲気があるのは、まさに私が入手した貴重なガラス乾板に刻印されていた、被写体の人物のモチーフがそのまま投影されたからと言っていいでしょう。
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【ミキシングで使用したCLA MixHub】 |
実際にはもっと低いオクターブで弾く擦弦楽器です。が、どこの民族楽器であるかも関係なく、かまわずこの音色を選び、すぐさまレコーディングに取り掛かった次第なので、黒海や地中海に面した国々が共有する優雅な民族楽器=ケメンチェの音色を使ったと意識したものではありません。したがって今回の場合、ケメンチェによるメロディ――と言うには多少引け目があり、後付けの理屈ということになります。しかし、その伸びやかな音色=ケメンチェが、このメロディ・ラインに見事に合っているということは、確かに言えると思います。
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【メロディにダブリング効果を与えたReel ADT】 |
本来の用途としては、あくまでミックスハブなので、複数のパートを一面で処理するためのプラグインであり、そういう使い方をするべきなのですが、今回はプラグインの音質をチェックする実験的試みとして、それぞれのパートにこのCLA MixHubを挿しました。普段私はUADのチャンネル・ストリップを使って掛け録りをすることが多いので、ミキシングでは整音の範囲でコンプやEQを使います。
実際、TR-08のハイハットの高域がやや耳に痛いと感じ、超高域をフィルターでカットするのにCLA MixHubのEQでいじりました。多くのトラックを扱う場合には、このチャンネル・ストリップはたいへん便利で高効率だと思います。
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【メロディに付加したAbbey Road Plates】 |
その代わり、Wavesのリバーブ・プラグインAbbey Road Platesにバス送りし、たっぷりとEMT 140独特の残響を付加しているので、モノフォニーの良さがかえって引き立っているのではないかと思います。それでは「郷愁と彼方の非線形」をお聴き下さい。
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