スキップしてメイン コンテンツに移動

作曲はクワモトさん―「ベーシックマガジンのテーマ」

【名機PC-6001のサウンドが楽しめる「ベーシックマガジンのテーマ」】
在りし日の8ビット・パソコンNEC PC-6001でプログラミングした「ベーシックマガジンのテーマ」をアップ。無料配信しています。

ホームページには、詳しくこの曲をアップした“経緯”について書いています。プログラムを打ち込んで保存しておいたのは小学生の時。10年以上経ってからそれを懐かしく思い出してロードし、デジタル録音したのは1997年頃のこと。この頃、既に私は20代でしたが、いっさい曲名以外の情報を忘れてしまっており、作曲者は誰なのか、その雑誌の何年何月号に掲載されていたプログラムなのかさえまったく憶えておらず、今回この曲をアップするまで、不明なままでした。
ところが、この曲をアップしたところ、ツイッターにて数名の方々から詳しい情報をいただきました。そうしてこれまで不明だったことがほとんど明らかとなり、私自身とても驚いています。情報を提供していただいた方々には、深くお礼申し上げます。

§

【プログラムが掲載されていた『マイコンBASIC Magazine』1983年10月号】
本当に長い間、私の中では謎のままであったことがすっかり解けて、目から鱗が落ちたわけです。まず雑誌について先に申し上げると、『マイコンBASIC Magazine』(電波新聞社)の“1983年10月号”だということが判明しました。そして作曲者は桑本伸広さん(当時なんと18歳?!)だということも分かり、掲載されていたページというのは、企画連載モノの“津久井ひろしのComputer Soundコーナー”で、3ページにわたり、「ベーシックマガジンのテーマ」について解説してありました。

実は私、さっそくこの号の現物を入手することができました。稀少なこの号をいま入手できたのはかなりラッキーだったと思っています。そうして確かに、「ベーシックマガジンのテーマ」はこのページに記載してあるプログラムを打ち込んだものであった――ことを確認し、あらためて懐かしい思いが込み上げてきました。私はあの頃(小学5年生)、この本を買って読み、この曲のプログラムを打ち込んだのでした。
ちなみに、作曲者兼プログラマーの桑本さんはこの曲のタイトルを「BASIC MAGAZINのテーマ」としていたことが分かりました。ですが、今回の曲のプロデュースに関しては、曲名変更の混乱を避けるため、敢えてこれまでどおり「ベーシックマガジンのテーマ」のままとさせていただきます。

【「津久井ひろしのComputer Soundコーナー」のページ】
8ビット・パソコンPC-6001のベーシック言語(N60-BASIC)で構成された「ベーシックマガジンのテーマ」のプログラムは、それほど複雑なものではありません。むしろびっくりするくらいシンプルなのです。曲のパートは3つ。キーボード(メロディ)の演奏、ベース演奏、ドラム演奏。
曲を聴くと、ドラム(リズム)のパートはノイズっぽくなっており、桑本さんはこのドラムのパートにはシンバルの音も入れて…と見立てたようです。“津久井ひろしのComputer Soundコーナー”では、このドラム演奏のプログラミングについて、文字数を大幅に取り解説していました。

【「PSGのしくみ」と「ドラム演奏法」の解説もあり】
その内容を簡単に要約するのはなかなか難しいのですが、PC-6001のPSGは、GIのAY-3-8910であり、矩形波3系統、ホワイトノイズ1系統です。サウンドは8オクターブで3重和音が可能(上画像にある「《第1図》PSGのしくみ」を参考に!)。
3つめのパートであるドラム演奏は、ホワイトノイズすなわちノイズ・ジェネレータ(NG)を使用しています。したがって、3つめの矩形波のオシレータをOFFにし、NGをONにして音を出す命令が必要です。音楽を奏でるベーシック言語の命令文には、“PLAY”と“SOUND”というのがあり、メロディを打ち込むには前者を、ドラム演奏でNGを使うには、後者を用いてプログラミングします。

“SOUND”の命令文は、“SOUND r,d”という形式でプログラミングします。
各レジスタ(0~15)にデータの値(0~255)を代入するという仕組みです。レジスタ7はいわゆるミキサーの役割を果たします。先に述べた矩形波のオシレータをOFFにしてホワイトノイズ(ちなみにNGのレジスタは6、データ値は0~63)を“PLAY”で演奏できるように割り当てる設定の命令文が、このプログラムの最初の方にあります。

【これが「ベーシックマガジンのテーマ」のプログラム】
プログラム全体を見ると、A$、A3$~A5$がメロディ演奏、F1$~F3$がベース演奏、C$とC1$がドラム演奏となっているかと思われ、サブルーチンの構成をまったく用いず、素直にメロディやベースラインのフレーズを各々の文字変数に代入し、“PLAY”文を音楽形式に沿って組み立てているシンプルなもので、これだけの短いプログラムであの演奏になるとは、感心してしまいます(しかも18歳でつくった!)。

今回はレコーディングからマスタリングまでの行程についての解説を省きます。が、例えばレトロな8ビット・パソコンでベーシックなパートをコンポーズし、それを鳴らして録って、DAWで今風のコンポーズの続きをやる、というのも面白いかも。Cubaseで曲を作り上げていくのとはまったく違う方法論のストラクチャーになるわけですが、かつてのBASIC言語による“自動演奏”は捨てたものではない――と思うのです。

皆さん、どうでしょうか。PC-6001による「ベーシックマガジンのテーマ」のテクノなミュージックをじっくりとお楽しみ下さい。

コメント

過去30日間の人気の投稿

「郷愁と彼方の非線形」―TR-08を使ったリズム

【Roland Boutique TR-08】 誰も関心を持たないガラス製の乾板写真(明治の頃と思われる、縁も所縁もない家族の肖像写真)を2年前に入手して、その半年後くらいにまた別の家族の乾板(数枚分)を入手してから、その乾板はずっと保管されたまま開封していませんでした。スマートフォンに内蔵されているデジタル・カメラが今日の主流となっている時に、古いガラス乾板の「像景美」に食指を伸ばすとは、いくらカメラ好きとは言え、我ながら些か物好きにも程があると言わざるを得ません。 数日前のこと。いよいよ放置していたこのガラス乾板を開封して、2年前と同様、デジタル・スキャンしようと企てたのですが、準備の最中、ぼんやりと目にした家族の肖像らしきものにすっかり愛着を感じ、いっそのこと物語を膨らまして夢想し、人間が写真の中で今だ息づいている「何か」、そこからインスパイアされた音楽――を作ってみようかと思ったわけです。 【シングル「郷愁と彼方の非線形」】 それが 「郷愁と彼方の非線形」 (Nostalgia and Beyond the Nonlinearity)というタイトル曲の企画。写真から迫り来る郷愁感を言葉で表すのと同時に、音楽でも表現してみようという試みです。 § 音源でまず選んだのはRoland TR-08。昨日、これを使って5分ほどのリズム・パートを作りました。ここにあと2パート程度のシンセ(おそらくYAMAHA MOXF6を使用するであろう)を付け加え、もしかするとさらにヴォーカル・トラックも加えられるといいのですが、ともかくシンプルなアレンジで、言わばひんやりとしたチル・ウェーブのようなものができれば…。そういう方向の曲を作ってみようと思ったわけです。TR-08ってちょっと熱量高めなサウンドだから、チルに合わないのではないか、という個人的な懸念も、何とか払拭したい。むしろTR-08をチルの王様に仕立て上げたいのです。 昔は“ヤオヤ”と呼ばれたTR-808(1980年発売)の原型を、21世紀に完全にリプロダクトしたRolandのBoutique TR-08。私は過去にオリジナルの“ヤオヤ”を使ったことがないので比較することができないのですが、当然808はもっと重くて大振りな機材だったから、このコンパクトにまとめられたTR-08はかなり高品位に収斂した使い勝手の良いものだと

「夏 永遠に」―オリジナルに忠実であることとは何か

【ギターの録音時に使用された手書きのコード譜(1996年)】 当ブログは今年の4月以降まったく更新していませんでした。誠に申し訳ありません。自主制作映画 『アヒルの狂想曲』 にかかりっきりだったため、この間、音楽制作はストップしていました。 ということで、久しぶりの音楽制作――。それは、自分にとって思い出深い、忘れかけていた遠い昔の、友人が作った曲。その復刻版すなわちリマスターです。曲名は、 「夏 永遠に」 ――。 もう何年も前に、この 「夏 永遠に」 をリマスタリングをしようと思っていました。その思いもまたすっかり置き去りになって忘れ去られ、歳月だけが過ぎました。歌っているのは、曲を作った本人――私の友人だった――小林泰樹と、私ことUtaro。いわゆるフォーク系ラヴ・ソングのデュオという形になっています。録音したのは1996年。そして私があとになって自分のヴォーカルを吹き込んだのが、翌年の1997年。当時はDATをマスターにし、16bit/48kHzで記録。そうして本当に長い間、この曲は誰にも聴かれず保管庫の中で眠り続けていましたが、2019年の12月に、ようやくリマスタリングを完了することができました。 1996年から97年にかけてのレコーディングの経緯については、 ホームページ に記載済みなので、ここでは省きます。当時のレコーディングの具体的な内容について、憶えている範囲になりますが、ここで記しておくことにします。 当時使用していたMTRは、TASCAMの 「MIDI STUDIO 644」 。このミキサー&マルチ・トラック・レコーダーは、市販のカセットテープ(ハイポジションテープ推奨)にDBXのノイズリダクションをかまし、倍速で記録できる4トラック・マルチ方式で、諸々を合わせると16チャンネル入力であり、3バンドEQやAUX入出力、外部からのインサート・エフェクトなどを駆使してミキシングすることができる高品位なMTRでした。後年、時代の流れで安価なハードディスク式のデジタル・マルチ・トラック・レコーダーに買い換えるまで、90年代の後半までこの 「MIDI STUDIO 644」 を使用していたことになります。 「夏 永遠に」 のレコーディングで使用したマイクロフォンは、アコギとヴォーカルの両パート共、コンデンサー型のAKG C451E。このマイクロフォンは主

「Mrs.Carole」のサウンドについて

確か、1995年頃に発売されたマイケル・ジャクソンのアルバム『HISTORY』のサウンドは個人的に好きで、どんなふうにミキシングとマスタリングで音を作り込んでいるのだろうと、非常に興味を持ち、独学でそのサウンドを真似てみたことがありました。 このアルバムの中のいくつかの曲が、別のCDのリミックス盤として出た時に、まったく違ったサウンドになっていたのに気づき、特にマスタリングでの(エンジニアの)“いじり”の影響が強いのだな、ということを感じたのです。 それはさておいて、自分自身の好きなサウンドについて、明確に言葉にして述べられる人はどれだけいるでしょうか。 「Mrs.Carole」 のサウンドについて。 私がこの曲のプログラミングとレコーディングで試してみたかったのは、MASCHINEとPro Toolsとの関係性をどう築くかということでした。 MASCHINE内である程度バランスを構成するまでは同じだけれども、それを2MIXで音出ししてPro Toolsで録るか、パラにしてPro Toolsで録るか。 そしてもう一つの課題は、Pro Toolsにおける“32bit浮動小数点/96kHz”のテスト。 結局のところ、「Mrs.Carole」はパラにしてPro Tools(32bit浮動小数点/96kHz)でレコーディングしました。ただし、ドラムセットはひとまとめで録りました。これを細分化して録ってしまうと、せっかくMASCHINEで作り上げたグルーヴが崩れる恐れがあったから。 Pro Tools内のミキシング及びマスタリングでは、EQ処理やコンプ処理などいろいろなことを施していますが、ヴォーカルがもしこれに加わった時、ヴォーカルが気持ちよく聴けるサウンドのバランスを考慮しました。32bit浮動小数点/96kHzでレコーディングするというのは、もはやPro Toolsがアナログコンソールと仮想されたことを意味し、そういうつもりでサウンドを作っていくわけです。 「Mrs.Carole」 はあくまでサンプル曲なので、曲としては単調な構成になっていますが、私自身の好きなサウンドが詰まっています。是非、聴いてみてください。

『Gの洗礼』を大転換!

【アルバムからサントラへ大転換。このトレードマークはどこで使われる?】 お詫びとご報告。2017年より制作し続けてきたアルバム『Gの洗礼』をこの度大転換し、因数分解いたします。因数分解するというのは、制作した個々の曲をそれぞれの持ち分として分けるということで、『Gの洗礼』で作ってきた曲のほとんどは、今度新しく自主制作する短篇映画のサントラとして組み込むことになりました。こうした「アルバムという形式ではなくなる」という突然の事態と変更につきまして、まずはお詫びしたいと思います。誠に申し訳ありません。 ただ、今度創ることになる短篇映画の中で、これらの曲が、全体のアンサンブルとして醸し出す雰囲気の重要な役割として発揮してくれるのではないかということを想像しています。この映画の中には、“アヒル”が複数登場します(!?)が、そのうちの一人の名がマルティン・グシンデ。その他の“アヒル”達は時折、先住民セルクナム族のいわゆる「縞と斑の祭典」の振る舞いをするのではないか、ということを敢えて示唆しておきます。 【セルクナム族の魂は曲の中に残る】 まだはっきりと中身は決まっていませんが、要するにこの映画作品の中に、“Gの洗礼”のテーマなりコンセプトが(ある意味において)入り込んできます。そしてもしかすると、制作した曲は、アルバムという形式よりも今回の映画作品の方がずっと、“水を得たように”、活き活きとしてくるのではないかとも思うのです。 現段階ではまだまだ流動的なので、話はこれくらいにしておきますが、映画に関する詳しい情報は、今後、プレミアム・サイト [Dodidn* Premium] をご覧いただければと思います。